日本では、夫婦が離婚する際、どちらか一方の親が単独で親権を持つ単独親権制度が採用されています。しかし、近年では共同親権制度の導入に関する議論が高まっています。この制度は、離婚後も両親が法的な親権を共有し、子どもの養育に共同で責任を負うものです。一見すると、両親が協力して子どもの利益を最優先に考える理想的な制度のように思えますが、導入に伴うさまざまな課題と懸念も浮き彫りになっています。本記事では、共同親権が引き起こす可能性のある問題に焦点を当てて解説します。
共同親権がやばいと言われる問題点
もちろん、共同親権にもメリットはあります。
ですが、問題点や懸念点も多々あるため、多くの場で今なお議論されています。
離婚後の対立が子どもに与える影響
共同親権制度の導入において最も懸念される点の一つは、離婚後も両親の間で意見の対立が続く場合、子どもに悪影響を及ぼす可能性があることです。離婚に至る背景には、価値観の不一致や暴力、経済的な問題など、深刻な対立が存在する場合が少なくありません。共同親権では、教育方針や生活環境など、子どもに関する重要な決定を両親が話し合って決める必要があり、意見が一致しない場合には再び争いが生じる可能性があります。これにより、子どもが親同士の葛藤に巻き込まれるリスクが高まります。
DVや虐待のリスクが増加する可能性
家庭内暴力(DV)や虐待が離婚の原因となるケースも多く、そのような状況下で共同親権を適用することは大きな問題を引き起こす可能性があります。共同親権制度のもとでは、暴力を振るった親にも子どもに対する法的な権利が与えられるため、被害者側が安心して生活を送ることが難しくなる場合があります。また、暴力的な親が子どもを利用して元配偶者をコントロールしようとする危険性も指摘されています。こうした問題を防ぐためには、DVや虐待の実態を適切に把握し、例外的な対応を可能にする仕組みが必要です。
生活環境の不安定化
共同親権では、子どもが定期的に両親のもとを行き来する形が一般的とされています。しかし、これにより子どもの生活環境が不安定になる可能性があります。学校や友人関係といった日常生活の基盤が変化しやすく、子どもの心理的な安定が損なわれるリスクがあります。また、親が異なる地域に住んでいる場合、移動距離が長くなることで子どもに負担がかかる可能性もあります。
法的・制度的な課題
日本では、現在の法律や制度が単独親権を前提として構築されています。そのため、共同親権制度を導入する場合、関連法規の大幅な見直しが必要です。例えば、子どもの居住地の決定や扶養費の分担、教育方針の統一といった具体的な取り決めがどのように行われるか明確にする必要があります。また、親同士の意見の不一致を解消するための調停や仲裁の仕組みも強化される必要があります。
子どもの声を尊重する必要性
共同親権の議論では、子どもの意見や気持ちが十分に尊重されることが求められます。子ども自身がどちらの親と暮らしたいのか、または両親との接触頻度についてどのように感じているのかを聞くことが重要です。しかし、年齢や発達段階によって子どもが自身の意見を明確に表現することが難しい場合もあり、そのような場合にどのように子どもの最善の利益を守るかが課題となります。
まとめ
共同親権制度には、子どもにとって両親の関与を維持できるというメリットがある一方で、現行の日本の社会や法制度においては、多くの課題が残されています。特に、親同士の対立が深刻な場合やDV・虐待のリスクがある場合には、共同親権が逆効果となる可能性が高いです。制度を導入する際には、こうした課題を十分に考慮し、子どもの最善の利益を最優先にした仕組み作りが求められます。日本社会がこの複雑な問題にどのように対応していくのか、今後の動向に注目が集まっています。