現代日本語の中で非常に汎用性が高いスラングとして知られる「やばい」。ポジティブな意味でもネガティブな意味でも幅広く使われていますが、この言葉がいつ、どのようにして流行し、一般的な日本語として定着したのでしょうか?
この記事では、「やばい」が流行し始めた時期と、その背景に迫ります。

「やばい」はいつから流行ったのか?その歴史を探る

誰から言い始めたのかが気になる「やばい」ですが、具体的な人物は分かっていません。
「やばい」はもともと俗語であるため、江戸時代から存在していたと言われています。

江戸時代:言葉のルーツ

「やばい」の語源は江戸時代の俗語「やば」に遡ります。当時、この言葉は裏社会で主に使用され、「危険」「怪しい」といった意味を持っていました。具体的には、盗賊や賭博師が警察や役人の目を警戒する際に「この場所はやばい」と使うような状況が考えられます。

この「やば」はもともとネガティブな意味を持ち、一般的な言葉として普及することはありませんでした。しかし、言葉としての基盤がこの時期に形成されました。

昭和時代:若者文化への浸透

「やばい」が現在のような広範な使われ方をし始めたのは、昭和後期、特に1970年代から1980年代にかけての若者文化の中でのことです。この時期、日本では若者向けの新しい文化や言葉が次々と生まれ、流行語が定着する土壌がありました。

  • 1970年代後半 学生運動やカウンターカルチャーの影響で、若者たちが独自の言語表現を作り出す傾向が強まりました。「やばい」もその一環として、当初は危険や不安を表す言葉として使われていました。
  • 1980年代 バブル経済期に突入した日本では、若者文化がますます多様化しました。この頃、「やばい」は次第にポジティブな意味を含むようになり、「すごい」「最高」といった肯定的なニュアンスでも使われ始めました。特に音楽やファッションなどのサブカルチャーの中で、この言葉が広く浸透しました。

1990年代:メディアによる普及

1990年代に入ると、テレビや雑誌などのメディアを通じて「やばい」がさらに広がりました。この時期、若者向けのバラエティ番組やドラマのセリフで頻繁に使用され、全国的な認知度を獲得しました。

  • テレビの影響 若者の会話をリアルに反映するドラマやバラエティ番組が増えたことで、「やばい」は若者特有のスラングとして視聴者に広まりました。
  • 音楽業界とファッション業界 J-POPアーティストやストリートファッションのデザイナーたちも「やばい」という言葉を積極的に使用し、彼らの影響力が若者文化をさらに活性化させました。

2000年代以降:インターネットの普及

2000年代に入ると、インターネットの普及が「やばい」のさらなる拡大に寄与しました。SNSやオンライン掲示板、ブログを通じて、この言葉は地域や世代を越えて使用されるようになります。

  • SNSの影響 TwitterやInstagramなどのプラットフォームで、「やばい」は感情を短く的確に表現するための便利な言葉として頻繁に使われました。ポジティブな意味でもネガティブな意味でも使用できるため、多くのユーザーに支持されました。
  • インフルエンサーの役割 有名人やインフルエンサーが日常的に「やばい」を使うことで、この言葉の人気はさらに加速しました。特にYouTubeやTikTokなどの動画コンテンツでの使用が広がり、若者だけでなく幅広い世代に受け入れられました。

現在:日本語の定番表現

今日、「やばい」は若者言葉の枠を超え、老若男女を問わず使われる言葉となりました。その多義性から、感情や状況を簡潔に表現する便利な言葉として日常生活に欠かせない存在です。

  • 教育やビジネスでの使用 依然としてカジュアルな表現であるため、フォーマルな場面では控えるべきですが、一部の場面では「親しみやすさ」を演出するために使われることもあります。

まとめ

「やばい」が流行し始めたのは昭和後期から1980年代にかけての若者文化がきっかけですが、その背景には時代ごとの社会変化やメディアの影響がありました。特に1990年代以降、テレビやインターネットの普及によって全国的な認知度を獲得し、2000年代にはSNSを通じて世代を越えた使用が一般化しました。

現在では、「やばい」は日本語の中で最も多義的かつ汎用性の高い表現の一つとして位置づけられています。その歴史を知ることで、この言葉が持つ奥深さや、言語文化の変遷を感じ取ることができるでしょう。